-鴉の檻- 404 Not Found

此処は残骸。

家族とは「1番身近な他人」である。

あれは昨日の出来事で、私は2週間に1度のカウンセリングに来ていた。

 

とは言うものの、私の人生は既に「終わっている」が故に毎回話題がなくて困っている。

この先変化もなければ進化もなく、退化の一途を辿るだけだからだ。

 

それだけじゃない、どんなに頭の中で整理しようとも、

いざ人を前にすると全くといっていいほど言葉が出なくなる……

その日もそうなる可能性が十二分にあった。

2年ほど続けようが慣れることはなく、これからもそうなんだろう。

 

何を話すか決まらぬままに席につく……いつもの事だ。

「最近どうですか?」

「……いつも通り……ですかね……」

お決まりの台詞だ。

この後に続く言葉など思いつかない。

 

ぼんやりしていると次の質問が飛んでくる。

「お母さんはどう?」

そう聞かれたので、くだらないことに腹を立てて早朝の町で大声を張り上げ、通行人に好奇の目で見られたことを話した。

 

まぁ、あの女については周知の沙汰なのでいつも通りの呆れ顔をされるわけですよ……愉快愉快。

その後は奴の「異常性」を指摘し合い、お互いに頷き、ため息をつく……本人にも聞かせてやりたいもんですよ(本人も通院してます)。

 

「ぶっちゃけた話、親だろうが他人ですからね……」

「確かに、言われてみればそうだね」

「家族って……1番身近な他人だと思うんですよ……」

そう言った瞬間に、3秒の沈黙……そうして、モニターから少し離れ、静かに椅子の背にもたれた先生がひとこと「……なるほど」と、漏らしたのです。

 

「家族は1番身近な他人……そうだよね、その通りだね」

 

酷く納得していました。

この後、私の言葉をlogに残していいかと聞かれたので問題ない旨を伝えると、先生は熱心にキーボードの上の指を動かしていました。

 

「家族だろうが考えていることは全く違う……寧ろそれは当たり前のことなんですよ……あの人は違うことが許せないみたいですが、子供は自分のクローンか何かだと思ってるんですかね」

「クローン……」

「……」

「鴉さん……考えが大人だね」

「……いやいや」

「いろんな人の話を聞いてきたけど、この言葉はとっても染みました……いやぁ、勉強になりました」

 

驚きました。

「勉強になりました」なんて言われるとは全く思っていなかったからです。

 

「お母さんにもこんな考えを持つ余裕があればいいけど……ないよねぇ……」

「ありませんね(笑)」

 

記憶を頼りに書き起こしたので、細かな部分に違いがあるとは思いますが、これが昨日の出来事です。

こんな人間の言葉でも、誰かの琴線に響くことがあるんですね……びっくりです。

 

「家族は1番身近な他人」

だからこそ齟齬が生まれるのは自然なことであり、違うという個性を理解し合うことが大切だと思うのです。

 

「同じでなければ許さない。こちらの思考を汲み取れるのが当たり前」

その考えが子供を壊していくことに、いつになったら気づくのか……否、あの女は死んでも理解しないのでしょうね。

まったく、悲しいことです……。