飛べない鴉
皆さんはLIVEに行ったりしますか?
大好きな歌を歌う、大好きな人のLIVE。
それはそれは楽しい時間でしょう。
鴉も一度だけ、行ったことがあります。
そんなものには縁もないし、ましてやこんな辺境の地に来るはずもないと思っていたアーティストさんが、自転車で行ける距離に来た……恐らく、あの時一生分の奇跡を使い果たしたのでしょう。
まるで夢のようでした。
押し潰されそうな音圧を全身に浴びながら、唯々魅了され、気がつけば泣いていました。
そして今、私は嘆き悲しんでいるのです。
今年好きになったアーティストさんのLIVEが二度ありましたが、私には到底手の及ばぬ土地だったからです。
言うならば、雲の上の桃源郷、私には足を運ぶ権利すらも与えられないような地です。
そこへ辿り着くだけでも、莫大な費用がかかるでしょうし、第一に、どういった行動をとっていいのかすらわからない……
新幹線の予約?ホテルの予約?
私にはまるで異世界の話であり、からっぽの頭では処理できない話です。
LIVEの様子が動画サイトで放映されましたが、きちんと観たのは一度きり、それ以上は辛くて観られませんでした。
LIVE後五日ほどTwitterからも離れ、情報をシャットダウンし、ひたすらに逃げていました……。
好きなのに、悪いことをしている気分です。
こんなことを思ったのは初めてで、今年は夏から秋にかけてずっと落ち込んでいました。
可笑しいですよね……本当に、大人げない。
諦めなよ、お前には無理なんだから……。
職場では学生が「~日に大阪行ってきまーす!」やら「明日は東京だ!」とか言ってはしゃいでいるのが恐ろしいです。
みんな働いたお金を自分のために使います。
自分が学生の頃、搾取されることが当たり前でした。
どんなに傷ついて、ボロボロになりながら働いても、分け前なんてありません。
働いたお金を自分のために使えたことなんてありません。
コンビニで好きなものを買う友人姉妹の姿を、指をくわえて見ている……それが私の「青春」です。
何もかも、台無しです。
鴉の世界は、ずっと狭いままで、散々羽をむしられた挙句、飛べなくなってしまいました。
みんな若いうちから色んな土地でたくさんの経験をしてくる中、私は惨めに震えるのです。
私の青春とは、一体なんだったんだろうかと。
そうして、今では逃げることしかできない馬鹿な大人に成り果てたのです。
これからもずっと、逃げ続けるんだろうな……
目の前を通り過ぎてゆく夢に涙しながら笑うんだ……本当はそっちに行きたいんだ、待ってくれよ……そう言いながら走り去るんだ。
いっそのこと、何も見ず、何も聴かずに生きていけたら良かったのにと、愚かな自分を呪う明け方。